
物流安全KPIとは?倉庫・庫内作業の事故を防ぐ指標例と運用方法を解説
物流現場には、フォークリフトと作業者の接触、荷崩れ、転倒、荷役作業中の墜落など
さまざまな労働災害リスクがあります。
多くの現場では「事故件数ゼロ」を目標にしています。
しかし、事故件数がゼロであっても、偶然事故に至っていないだけの可能性があります。
事故件数だけで現場が安全だと判断することはできません。
事故につながる兆候や安全活動の進捗を把握するために有効なのが、安全KPIです。
本記事では、物流・倉庫現場で設定したい安全KPIの具体例と
事故予防につなげる設定・運用方法を解説します。
▼安全対策をしくみ化する方法については下記資料よりご確認いただけます。
【物流倉庫の安全対策を仕組み化する方法 ~事故をゼロに近づける3つのポイント~】
人とフォークリフトの接触リスクを減らす動線設計、危険を見える化する
工夫、安全対策を継続させる組織体制づくりをわかりやすく解説
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物流における安全KPIとは

安全KPIとは、物流現場の安全状態や安全性を高める活動の進捗を数値で把握するための指標です。
安全は従業員の生命や健康だけでなく
物流拠点の安定稼働、人員確保、作業品質、企業としての信頼にも関わります。
KPIを設定することで、感覚や経験に依存していた安全管理を可視化し
現場・管理者・経営層が共通の基準で課題を判断できるようになります。
安全KPIは「結果KPI」と「予防KPI」に分ける
種類 | 確認内容 | 指標例 |
結果KPI | 発生した事故の頻度や重大性 | 災害件数、休業日数 |
予防KPI | 未然防止のためのリスク管理 | ヒヤリハット、安全活動状況 |
結果KPIだけでは、問題が数字に表れるのは事故の発生後です。
事故を未然に防ぐには、危険を発見できているか、対策が完了しているか
ルールが守られているかを確認する予防KPIも組み合わせます。
物流で安全KPIが必要とされる理由
物流現場には、配送時の交通事故だけでなく
倉庫や物流センターの庫内にも、次のようなリスクがあります。
・フォークリフトと作業者の接触
・荷台やプラットホームからの墜落・転落
・床面の水濡れ、段差、障害物による転倒
・荷崩れや保管物の落下
・重量物や無理な姿勢による身体への負担
・設備へのはさまれ・巻き込まれ
厚生労働省の2025年労働災害動向調査によると
労働災害の発生頻度を示す度数率は、調査産業計の2.01に対して倉庫業は2.61でした。
参照元:厚生労働省「令和7年労働災害動向調査」
(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/saigai/25/dl/2025toukeihyo.pdf)
また、2025年の休業4日以上の死傷者数は、倉庫業で1,296人、陸上貨物取扱業で1,252人でした。
合計した2,548人のうち、「転倒」と「動作の反動・無理な動作」が約半数を占めています。
参照元:厚生労働省「令和7年死傷災害統計確定値(分析用)」
(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/r7_16_sisyou_bunseki.xlsx)
上記のデータからも読み取れる通り、物流における安全管理は
交通事故やフォークリフト事故だけでなく、通路、床面、作業姿勢、荷役方法など
庫内作業全体を対象にする必要があります。
「事故件数ゼロ」だけでは安全性を判断できない
事故件数だけでは、報告されていないヒヤリハット、危険箇所、ルール違反などを把握できません。
例えば、フォークリフトの一時停止違反が続いていたとしても
接触事故が起きなければ事故件数には表れません。
事故を未然に防ぐには一時停止遵守率や歩車分離の未対応箇所数なども確認する必要があります。
安全KPIがあれば、安全上の課題や対策の優先順位を数値で示せます。
レイアウト変更や安全設備への投資を社内提案する際や
拠点間・委託先の安全水準を確認する際の根拠としても活用できます。
物流安全KPIの項目例
安全KPIは、数を増やすのではなく、自社の重点リスクに関係する指標を選ぶことが重要です。
事故の発生状況を管理するKPI
KPI項目例 | 確認内容 |
労働災害発生件数 | 死亡・休業・不休災害、軽微な負傷、物損を分類し、発生工程や原因も確認する |
度数率 | 事故の発生頻度を労働時間当たりで把握し、規模の異なる拠点を比較する |
強度率 | 労働損失日数から、災害の重大性を確認する |
再発率 | 原因分析や再発防止策が機能しているか確認する |
度数率や強度率は特に他拠点との横並びでの安全レベルを評価する際に有効な指標です。
度数率が事故の「起こりやすさ」、強度率が事故の「重さ」を示します。
度数率=労働災害による死傷者数÷延べ実労働時間数×1,000,000
強度率=延べ労働損失日数÷延べ実労働時間数×1,000
参照元:厚生労働省「度数率、強度率、年千人率」
(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo22_1.html)
事故を未然に防ぐKPI
KPI項目例 | 確認内容 |
ヒヤリハット報告状況 | 件数、発生工程、対策状況 |
安全教育実施状況・理解度 | 実施回数、教育内容、受講率、理解度、教育後の実践状況 |
作業ルール遵守率 | 一時停止、速度制限、歩車分離、保護具着用、作業手順等の遵守率 |
リスクアセスメント対応状況 | 危険の特定から対策、効果確認までの実施状況 |
ヒヤリハットは、少ないほど安全とは限りません。
報告件数が少ない場合でも、危険がないのではなく報告がないだけの可能性もあります。
件数の多寡だけで減点評価せず、改善への活用状況まで確認しましょう。
また、安全教育実施状況も実施回数だけを目標にすると、実施自体が目的になりかねません。
教育内容や受講率、理解度、教育後の実践状況まで組み合わせることが重要です。
▼物流現場で管理すべきKPIについてはこちらをご覧ください
【物流現場のSQCDを管理するKPIとは? 重要性と指標例を解説】
KPIの設定がなぜ重要なのか、
S:安全、Q:品質、C:コスト(生産性)、D:デリバリーの各KPIについて
どのような項目を指標にすべきかを解説しています。
物流の安全KPIを設定する4つのステップ
安全KPIの役割は、発生した事故災害を振り返るだけでなく
現場に潜む危険を把握し、事故が起こる前に必要な対策を講じるとともに
予防活動の進捗や効果を継続的に確認できる管理基盤を整えることです。
ここでは、安全管理活動を組織的かつ継続的に進めるためのKPI設定の進め方を
4つのステップに分けて解説します。

ステップ1 自社の重点リスクを特定する
過去の事故、ヒヤリハット、安全パトロールの指摘、作業者への聞き取り
フォークリフトと歩行者の動線などから危険を洗い出します。
そのうえで、発生可能性と重大性から優先順位を決めます。
ステップ2 結果KPIと予防KPIを組み合わせる
重点リスクごとに「どのような事故が発生したか」と
「事故を防ぐ活動が進んでいるか」の両方を確認します。
例えば転倒リスクなら、転倒災害件数に加えて
通路・床面の段差箇所の把握や注意表記ができているか
危険個所の把握と対策有無まで管理する必要があります。
ステップ3 定義・目標・確認頻度・責任者を決める
KPIごとに、計算式、目標値、確認頻度、責任者、未達時の対応を定めます。
「何を1件と数えるか」「どの状態を改善完了とするか」まで統一しなければ
拠点や担当者によって数値が変わるため注意が必要です。
例えば事故災害重症度なら
「休業が発生したか、発生した場合休業日数は何日と診断されたか」等で定義します。
ステップ4 原因を分析して改善する
KPIが目標を下回った場合、注意喚起だけで終わらせず、次の視点から原因を確認します。
・人:教育や理解度に問題がないか
・方法:作業手順やルールに無理がないか
・モノ:荷物の形状、重量、保管状態に危険がないか
・設備:動線、床面、照明、機器に問題がないか
・管理:点検や改善の責任体制が明確か
対策後はKPIが改善したか、別の工程に新たなリスクが生じていないかまで確認します。
物流安全KPIの運用方法
KPIは、リスクの重大性や緊急度に応じて確認頻度を分けます。
・日次:事故災害・重大なヒヤリハットの発生状況
・週次:危険箇所の改善進捗・対策活動状況
・年次:重点リスク、目標値、KPI自体の見直し
目標未達時には、誰が原因を確認し、いつまでに対策を行い、誰が効果を確認するかを明確にします。
設備の設置、手順書の変更、教育の実施だけで完了とせず
同じ事故が再発していないか、ルール遵守率が向上したかまで確認することが重要です。
運用では、次のような状態にも注意しましょう。
・事故件数ゼロだけを目標にし、危険な兆候を管理していない
・ヒヤリハットの多い部署を減点し、報告を抑制している
・数字の集計と会議報告だけで、改善につながっていない
・リスクの異なるすべての拠点に、同じKPIを設定している
度数率などの全社共通KPIと、フォークリフト、転倒、重量物作業などの拠点別KPIを
分けて設定すると運用しやすくなります。
物流の安全KPIに関するよくある質問

Q.安全KPIはいくつ設定すればよいですか?
A.最初から増やしすぎず、重点リスクに関係する結果KPIと予防KPIを合わせて
5~10項目程度から始めます。
運用しながら不要な指標を削除し、必要な指標を追加しましょう。
Q.拠点間で安全性を比較するにはどうすればよいですか?
A.事故件数だけでなく、労働時間を用いた度数率などを活用します。
ただし、商品、設備、作業方法が異なる場合は
数値だけで優劣を判断せず、拠点固有のリスクも考慮します。
Q.物流委託先の安全性はどう確認すればよいですか?
A.事故件数だけでなく、ヒヤリハット報告状況やリスクアセスメント対応状況
安全教育実施状況、ルール遵守率、指摘事項の改善管理、本部の支援体制まで確認します。
物流安全KPIに関するまとめ
物流・倉庫現場の安全性は、事故件数だけでは正しく判断できません。
労働災害件数、度数率、強度率などの結果KPIに
ヒヤリハット、危険箇所改善率、教育受講率、作業ルール遵守率などの
予防KPIを組み合わせることが重要です。
さらに、KPIを集計するだけでなく
未達の原因を分析し、対策を実施したうえで
改善後の状態まで確認する必要があります。
安全KPIの目的は活動件数を管理することではなく
事故の兆候を早期に捉え、現場のリスクを継続的に減らすことです。
自社の安全管理体制を見直してみませんか?
安全KPIは、指標を設定するだけでは十分ではありません。
現場のリスク把握から、原因分析、対策の実行、改善後の確認まで継続することで
事故を未然に防ぐ仕組みとして機能します。
当社では、20年以上の物流現場の運営経験をもとに
安全管理だけでなく品質・コスト含めた物流体制全体の最適化を提供しています。
「安全活動が形骸化している」
「自社に適した安全KPIが分からない」
「物流運営を含めて改善したい」
といった課題がございましたら、お気軽にご相談ください。
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人とフォークリフトの接触リスクを減らす動線設計、危険を見える化する
工夫、安全対策を継続させる組織体制づくりをわかりやすく解説




