
医療機器物流の課題を解決!品質とコストを両立させる5つの設計ポイント
医療機器の物流は、「命を支える」製品を扱う重要な業務です。
一見、一般の物流と変わらないように思えても、実際には品質や管理のレベルがまったく異なります。
温度・湿度の管理、トレーサビリティの徹底、事故防止など、どれも欠かすことはできません。
しかし多くの企業では、製品の開発や営業活動に注力するあまり
物流面のリスクやコストが見過ごされがちです。
この記事では、医療機器物流における課題と
品質とコストを両立するための実践ポイントをわかりやすく解説します。
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1.医療機器物流の3つの特徴
1) 高い品質管理が求められる
医療機器は、精密機器や電子部品を含むものも多く、温度・湿度・衝撃・異物混入への対策が必須です。
保管環境が不適切だと、性能が低下したり安全性に影響するおそれもあります。
2) トレーサビリティの確保
医療機器は、製造から出荷、流通、納品までの
すべての工程を正確に追跡できる仕組み(=トレーサビリティ)が求められます。
ロット番号やシリアル番号を用いた管理により、どの製品がいつ、どのルートで流通したかを記録し
万が一の不具合やリコール時にも迅速に対象製品を特定できます。
こうした情報をシステム上で一元管理することで、
品質保証と安全性の確保、そして顧客からの信頼性向上につながります。
3) 緊急対応力
医療機器は、治療や手術の現場で必要とされ
一刻を争うケースも多いため、突発的な注文や緊急出荷への対応力が欠かせません。
在庫・輸送・人員を柔軟に動かせる体制を整えることで
急な医療現場のニーズにも迅速に応えられる物流オペレーションが求められます。
また、輸送ルートの二重化や24時間体制での問い合わせ対応
BCP(事業継続計画)などを組み合わせることで、災害やトラブル時でも安定した供給体制を維持できます。
これら3点が、医療機器物流を一般商材の物流と大きく分ける要素です。
2.医療機器物流の主な課題

1) 梱包・保管中の品質劣化リスク
静電気やホコリ、温度変化による性能劣化が発生しやすいのが現実です。
そのため、専用の温湿度管理や、
粉じんや微生物、静電気などの汚染要因を基準値以下に抑えて清潔な環境を維持する
「クリーンゾーン」を備えた倉庫での保管が求められます。
2) トレーサビリティの不備
トレーサビリティとは、製品がいつ・どこで・誰によって作られ、どの経路で流通したかを
追跡・記録できる仕組みのことです。
しかし、入出庫管理が紙ベースだったり、ロット番号をアナログで管理すると
情報の抜けや誤記が発生しやすく、返品や原因調査に多大な時間とコストがかかるケースがあります。
3) 緊急出荷に対応できない体制
医療現場からの急な依頼に応えられず、納品遅延が発生することも。
一度のトラブルでも信頼を失うリスクが高い業界です。
4) コストと品質のバランス
品質を高めようとするとコストが増え、コストを抑えようとすると品質リスクが高まる。
多くの担当者が、この相反する課題の中で最適なバランスを探る必要に迫られています。
このように、医療機器物流では品質・スピード・コストのすべてを高い水準で求められます。
では、これらの課題にどう向き合い、品質とコストを両立する物流体制を構築すればよいのでしょうか。
次に、そのための物流設計のポイントを見ていきましょう。
3.品質とコストを両立する医療機器物流設計のポイント
品質とコストの両立は、現場の工夫だけでなく設計段階から仕組みを整える視点が欠かせません。
下記では、そのために押さえておきたい物流設計のポイントをまとめました。

1) エリア区分の設計
医療機器の保管・梱包では、製品の特性に合わせてエリアを分けることで
品質を保ちながら作業効率を高めることができます。
たとえば、粉じんや微生物、静電気などの汚染要因を基準値以下に抑えて清潔な環境を維持する「クリーンゾーン」と
一般的な作業を行う「一般ゾーン」を明確に分けることが重要です。
このようなエリア区分の設計を行うことで、異物混入や静電気による品質劣化を防ぎ、安定した品質管理を実現できます。
2) WMS(倉庫管理システム)の導入
WMS(倉庫管理システム)を導入することで、ロット番号や有効期限
シリアル番号などの情報をデジタルで一元管理できます。
これにより、人為的な入力ミスを防ぐだけでなく、製品がいつ・どこで・どの工程を経て流通したかを
正確に追跡・記録できる「トレーサビリティ」を強化できます。
情報をリアルタイムで可視化することで、誤出荷や返品対応などのリスクを最小限に抑え
品質管理の精度が大きく向上します。
▼WMS導入については下記の記事をご覧ください。
3) KPI管理
誤出荷率・欠品率・リードタイムなどの主要な指標(KPI)を可視化し、定期的に分析することで
現場の状態を正確に把握できます。
数値で課題を見える化することで、感覚に頼らない改善が可能になり、ムダやミスの早期発見にもつながります。
こうしたKPI管理を継続することで、品質・コスト・生産性をバランスよく高める仕組みを構築できます。
▼KPI設定については下記の記事をご覧ください。
4) 運用ルールと標準化
医療機器の入出荷業務では、製品の特性や識別単位(ケース・ボール・バラなど)が複雑なため
標準化された作業手順と明確なルール化が不可欠です。
まず、医療機器特有のバーコードが整備されていない商品については、
ラベル表示や色分けによる視覚的な補完を行い、誰が見ても誤りなく識別できる体制を整えることが必要となります。
また、単位別出荷(ケース・箱・ボール・バラ)のように
単位ごとにバーコードの有無や識別方法が異なる場合には
バーコード整備を前提としつつ、運用上の補完策(表示・ピッキングリストへの注記)を徹底することが重要です。
こうした工夫やルールを手順書やチェックリストとして明文化し
定期的な教育やOJTを通じて知識と意識を統一することで、
ヒューマンエラーを防止し、誰が作業しても同じ品質を維持できる体制を実現します。
5)習熟度に応じた配置設計と人材育成
医療機器物流では、作業者の習熟度に応じた配置設計も品質担保の重要な要素です。
特にバーコード未整備の商品や単位が複雑なピッキング作業では
エリアを固めてピッキングを行うことで、新人作業者による不具合を減らすなどの工夫が考えられます。
また、初めから複雑なエリアや単位別出荷(ボール・バラなど)を割り振るのではなく
段階的なスキルアップ設計が望まれます。
作業者の習熟度に応じた教育・配置を仕組みとして組み込むことで
属人的な運用を防ぎ、品質とコストを両立した現場運営が可能になります。
4.医療機器物流に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 医療機器物流の特徴は何ですか?
A.医療機器物流では、一般製品よりも品質管理・トレーサビリティ・スピード対応が重視されます。
特に、温度や湿度、清潔度の維持が重要で、製品の安全性と信頼性を守る体制が必要です。
Q2. 医薬品物流のような許可は必要ですか?
A.医療機器は「高度管理医療機器販売業許可」などが必要な場合があります。
委託先が該当許可を保有しているか確認しましょう。
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Q3. 温度管理はどのレベルまで必要ですか?
A.製品の仕様により異なります。
常温・冷蔵・定温など、条件を明確にし、データロガーで記録を残すことが重要です。
Q4. 返品・回収対応も委託できますか?
A.トレーサビリティ管理が整っていれば可能です。
ロット追跡や履歴管理に対応できる委託先を選びましょう。
5.医療機器物流で大切なポイントまとめ
医療機器物流で最も重要なのは、品質・トレーサビリティ・緊急対応の3つです。
コスト削減を優先しすぎると品質を損ない、結果として取引先からの信頼を失うことにもつながります。
一方で、品質を守るための仕組みを整えれば、安定稼働とコスト最適化の両立が実現できます。
医療機器物流に精通した3PL企業へ委託することで、法令対応・品質管理・効率化を一括で推進することが可能です。
医療機器物流の改善は、正しい知識と経験を持つパートナー選びが成功のカギです。
当社では、医療機器の物流センターを複数拠点、10年以上の実績を持っており
各企業様の状況に合わせた最適な物流体制の構築を支援しています。
「自社の物流体制を見直したい」と感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。



